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コラム

2025.06.11

自動車盗難情報

横浜からタイにアルファードが違法輸出される理由とは?

アルファードがタイへ違法輸出される…?

LINEヤフー株式会社が運営するクルマ情報・サービスサイトcarview!(カービュー)様に、「アルファード窃盗をぎりぎりで食い止めた」という記事がアップされました。特に、アルファードオーナー様には非常にショッキングな生々しい写真と共に、詳しい情報がまとめられています。

さて記事によると、これらアルファードはタイへ向けて違法輸出されるところだったとのこと。実はタイは、日本の高級車が並行輸入品として広まりやすい文化的背景を持っています。それは次の2つの側面から説明できます。

タイでアルファードが人気な理由とは

①タイは日本と同様、右ハンドル・左側通行の交通ルールを採用しています。タイは(イギリスの植民地になったことはありませんが)、イギリスの影響を強く受けた時期があり、その際に右ハンドル・左側走行となったと一般に言われています。もちろん2025年現在でも、タイ国内では右ハンドル車が主流です。

アルファードは特に富裕層を中心に人気の高いモデルとなっています。バンコク市内では頻繁に見かけるほか、ハイブリッド仕様も含めて日本からの並行輸入車も多数流通しています。トヨタ以外の各国メーカーがアルファードに似たモデルを発売し、市場参入を試みることも少なくありませんが、2025年現在アルファードは不動の人気を維持しています。

この2点により、盗難アルファードがタイへ違法輸出されるのは非常に理に適っているといえるでしょう。なお、マレーシア・インドネシア・香港なども右ハンドルのアジア圏で、タイと似た状況にある国・地域といえますし、実際日本車(高級車)の並行輸入が流行しています。

アルファードにおける盗難リスクとその技術的背景

では次に、日本国内でのアルファード盗難状況についても理解しておきましょう。
近年ではアルファードを標的とした車両盗難が増加しており、30系後期モデル(特にExecutive Lounge)に集中しています。

この傾向には以下の要因が関係しています。

30系アルファードが狙われやすい理由

・トヨタ標準のセキュリティ仕様が旧型のため、CANインベーダー(車両の制御信号を不正に操作する盗難手口)への対策が不十分

・2023年8月にトヨタがCANインベーダー対策として、アップグレードセキュリティシステムをリリースしたが、対象ユーザーに普及していない
参考:https://toyota.jp/dop/safety/securitysystem/

・ユーザー側で追加のイモビライザーやセキュリティ対策を講じていないケースが多い

これらの条件が重なり、盗難のリスクが高くなっています。

40系でも新型手口による被害が発生

2023年に登場した40系アルファードは、旧型CANインベーダー対策が標準で実装されているものの、最近では「ドア内部に穴を開けて配線に直接アクセスする」など、新型手口による被害が報告され始めています。この手口については既に、主にランドクルーザーやLEXUSを狙った事例を挙げて当協会は動画で注意喚起しました。しかし当然、アルファード40系をはじめ他車種でも注意が必要です。

事業者でも対策の必要性が高まる

オーナー個々の防犯意識向上や、実際のセキュリティ強化施策の導入の必要性はますます高まっており、当協会はこの啓発を今後も続けていきます。
一方で、高級車販売やリース関連の事業者や、社用車や営業車などの一元管理(いわゆるフリート管理)業務担当者においても、盗難リスクへの対応がより強く求められています。コストと相談しながら、CAN攻撃に対応した後付けセキュリティ機器の導入が必須となってきているといえるでしょう。

日々の防犯を心がけましょう

今回のアルファード盗難については、横浜税関の大変見事な働きで、海外への違法輸出自体は防止されました。しかし、部品をばらされたり、傷を各所に付けられながらコンテナに押し込まれたりし、大切な車は大きな損傷を被りました。オーナー様の心理的負担も相当のものでしょう。こうした被害に遭わないためにも、まずは窃盗犯のターゲットとならないようにしなくてはなりません。日々のセキュリティ状況を整備し、防犯意識をしっかりと持って生活していきましょう。

日々の防犯チェックには、当協会作成の防犯チェックリストをお使いください。

またこちらで、お住まいの地域・ご使用の車種などを入力することで、ご自身の自動車盗難危険度を簡単にチェックできます。ぜひご利用ください。